神の実在と霊界の実相・霊界の聖人たち

金英順婦人と李相軒先生

金英順婦人は母に導かれるままに統一教会に入教し、後に「四三〇双家庭」の祝福を受け、牧会者の夫と共に信仰者の道を歩んでこられました。
 ある日、祈祷していると神様の声が聞こえてきたのです。深い信仰生活をしていると、内面から神の声を聞くことは稀なことではないそうすが、金英順婦人の場合はもっと具体的に、神様の新しいメッセ−ジが直接伝わってくるという体験をしたのです。
 「神様は、私を熱い溶鉱炉に入れて、過去の私を溶かし、新たに神様の娘としてつくり変えようとされました」と婦人は表現しています。
 疲れてベッドに横になっているときでした。巨大な手が現れて、大きな五線紙に書かれた楽譜がめくられ、「私のメッセ−ジを書きとめなさい」という声が聞こえてきました。書きとめてはみたものの、その意味が理解できずにやり過ごしていると、
 「この親不孝者め」という雷のような大声がしたのです。驚いて飛び起きてひざまずくと、天から「新しい歌を書きとめよ」という怒声が聞こえたのでした。
 それからというもの、金婦人は四〇日、四〇夜、慟哭して脱水状態になりながら、一〇〇曲あまりの童謡を天から授かったのでした。それらの童謡は「ヤッホ−、神様」という題名で出版されました。また天のメッセ−ジもその後「私を訪ねてくださった神様」という題名で出版されました。
 さて、金婦人が尊敬し、また親しくしていた統一思想研究院の院長、李相軒先生が八十二才で亡くなられた、その昇華式でのことでした。
 「今は厳粛な時間だから、夜、家に行きます」という、李相軒先生の声が聞こえたのです。たった今亡くなられた人が自由に来ることができるのか、と金婦人も驚きました。すると、「李相軒は、天国人だよ」という神様の声が聞こえたのでした。
 神様が「天国人」と認めた李相軒先生について、紹介しなければならないでしょう。
 先生は儒学者の家に生まれ、ご自身は医学の道に進まれました。内科医として人体の精密な研究に没頭される一方、神は実在するのかしないのか、死後の世界はどうなのか、人生の目的は何であるのか、という問題を真剣に探究されたのです。
 普通の人間なら若いときはそのような問題で悩んでも、やがては日常の生活に埋没してしまうものです。しかし先生の場合は違いました。あらゆる哲学を研究され、民族主義から共産主義、さらには宗教教理を遍歴されたのです。それでも真理を見出すことができませんでした。見えない内なる自分とは何であるのか、いくら考え、研究しても分からず、死を考えるほどに苦悶されたのです。
 先生は四十才を過ぎた頃に、統一原理に出会われたのでした。
 「その時の私の感激は、天下を得た喜びよりも大きいものでした」と先生は語っています。謹厳な先生が人目につかないところで、踊りを踊ったというのですから、その喜びの大きさが分かります。後に先生が体系化された「統一思想」の内容が、原理を聞いた瞬間に脳裏に浮かんだということです。
 「原理に近く接し、分析すればするほど、それは私に無限の生力要素と活力要素となりました。そして様々な次元で組織的に分析してみた結果、それはあまりにも、とてつもない大真理だったことが分かるようになりました」と先生は書いています。
 それからの先生の人生は大転換しました。医師をやめて原理の研究に没頭され、「統一思想」「勝共理論」を体系化されたのでした。
 李相軒先生は「学術セミナ−」や「教授セミナ−」でどんな質問にも原理によって答えることができたのですが、唯一、解答に詰まったのが霊界に関することでした。それでいつかは「霊界論」を執筆するという目的で、いろんな資料を通じて研究されました。
 また霊界が見えるという金婦人にいくつかの課題を与えて、辛抱づよく待たれたのでした。しかしついに生前の先生は「霊界論」を完成することができませんでした。
 昇華式の夜からというもの、李相軒先生は昼夜の別なく、金婦人を訪ねてくるようになったのです。夕食の準備をしていようが何をしていようが、関係なしに現れてせかされるものですから、金婦人も苦しくて肉体が耐えられないほどになりました。
 すると神様の声が聞こえたのです。
 「わが子よ。相軒は私の子だから、自分の思いどおりに、したいとおりに、させてやりたい。今、霊界に来て、無我夢中だ。ここの現実を見ながら、研究し、分析をして、地上人にすべて知らせてやりたいというのだ。今は霊界と地上を区別しないまま、無我夢中で回っているのだ。だからおまえが理解しなさい」
 「では、私の体はどのように耐えたらいいのですか」と金婦人は神に抗議しました。
 「わが子よ、互いに時間を定めよう」と神様は言われたのです。それからは定められた時間にのみ、先生は現れるのでした。
 生前の先生は大変に礼儀正しく、言葉づかいもとても丁寧な方でした。ところが霊界の先生は分別のないいたずらっ子が、あたふたとしているようでした。本当に李相軒先生と会っているのだろうか、という疑念が婦人の心をよぎりました。
 「奥さん、それはあんまりだ。気分が悪いです。とても自尊心が傷つきます」と即座に先生の言葉が返ってきました。そして霊界からのメッセ−ジを、必ず地上に伝えてくれ、と言われたのでした。
 李相軒先生の霊界からの第一声は、愛する子供たちに伝えられたものでした。
 「地上の暮らしは何でもなかったな。何でもなかったな。何でもないのに・・・神様、
神様──」

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