私はどこへ行くのか・天宙を貫く大法則

人はどこから来てどこへ行くのか

考えてみれば、私がここに存在しているという事実は、奇蹟的なことです。私には親がいて、そのまた親がいて、その血統が絶えることなく何百代となくつづいた結果として、今日の私がいるわけです。
 聖書の記述によれば、人類始祖はアダムとエバという一対の男女から産み広がったことになっています。現代の科学者たちの研究によっても、人類は一対の男女から産み広がったということです。その発現の地域はアフリカとされています。
 進化論によれば、猿が進化して人間になったというのです。猿が道具を使い、労働をするようになり、人間になったというのです。するといろんな猿がいるように、いろんな人間がいてもよさそうであり、猿と人間の中間がいてもよさそうですが、それはないのです。猿と人間には明確な違いがあります。キリンの首は突然に長くなったのであって、その中間のキリンの化石は発見されていないのです。
 人間は民族人種を問わず、よく見ればものの考え方から能力まで、人間としての違いはないのです。皮膚の色や目の色の違いは、気候環境や食べ物からくる相違であって、付き合ってみれば人間はみな同じです。知能において白人は黒人に優ると考えられていた時期もありましたが、それは環境と教育の違いからくるものです。人種差別はいまだに残っているとはいえ、人種に格差があると考える人はないでしょう。身体能力においても、白人、黒人、黄色人種を問わずほとんど同じであることは、サッカ−・ワ−ルドカップを見ても分かることです。
 人類はみな兄弟です。これは宗教的な標語ではなく、客観的な事実のようです。ではアダムとエバは、どのようにして誕生したのでしょうか。猿と人間の遺伝子は九十%以上が同じですが、その数%の違いに創造の力が働いたと考えるほうが、むしろ自然ではないでしょうか。
 私がここに存在しているという事実は稀なる幸運の結果ですが、私は自分の意思で生まれてきたわけではありません。物心がついたときには自分がいたのです。何の目的もなく存在しているとしたなら、サルトルのようにそれは「嘔吐」をもよおすような事実かもしれません。反抗的な子供の言いぐさではありませんが、「親たちの勝手な欲望でおれを産んだのだ」ということになるのです。
 人間は遺伝子を操作することはできても、創造することはできません。虫一匹造ることはできないのです。とすれば人間も自然万物も、造られたもの、被造物ということになります。被造物にはなぜ造られたのか、その創造の目的は分からないのです。創造の目的はもし創造主がおられるならば、創造主にしか分からないのです。創造目的が分かるなら、被造物の存在目的も自動的に分かるはずです。
 生命は大河の流れのようなものです。私という命は、その大河の流れに浮かぶ一つぶの泡のようなもの、と私は考えていました。泡のようにはかない、短いといえばあまりに短い一生です。そして生命は大河の流れに乗って、果てしない海へと流れ込むのです。
 深海に流れ込んだ生命に、意識があるのでしょうか。それとも人が眠りに就くように、死は永遠の眠りなのでしょうか。これが問題です。
 死後の生、すなわち霊界というものはあるのかないのか、あると考える人、ないと考える人、半々のようです。宗教を信じる人も霊界はないと教える宗教があり、あると教える宗教があります。宗教を持たない人でも、単純に霊界を信じている人もいます。でも自分が本当に死んで、霊界に行くと真剣に考えている人は少ないのです。
 「奇跡の輝き」という映画がありました。交通事故死した夫は天国に行くのですが、夫の死を悲しんで自殺した妻は地獄の底に落ちるのです。天国にいた夫は妻の自殺を知り、数々の困難を乗り越えて地獄の底まで降りて行って、妻を救出するという物語です。話に聞く天国と地獄を、リアルに映像化して見せてくれた映画でした。見た人も多いでしょうが、本当に自分がそこに行くと考えた人は稀でしょう。ファンタジ−として、楽しんで見たのです。死は誰にも訪れるものですが、自分が本当に死ぬとは思わないのです。思わないようにしているのです。
 私も年齢を重ねて父が死に母が死に、妻にも死なれると、死は生よりも身近なものになりました。死の淵に落ち込んだ日の妻の顔が、私の意識から離れないのです。朝に夕に丹精を込めて咲いた盆栽が、他の家の座敷に飾られたとしたら、戸をゆすって悔しがる妻の気持ちはよく分かるのです。
 それから私はよく霊界の本を読みました。その種本になっているのが、十八世紀のスエ−デンの偉大な学者でもあったスエ−デンボルグの著作のようです。彼は生きながらにして霊界を見聞するという異常な体験を重ねました。そしてその体験を彼は膨大な「霊界見聞録」として残しました。それらの内容のすべてを否定する勇気は、私にはありませんでした。

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